3月26日(木)、那覇市の桜坂劇場ホールCにて、沖縄国際映画祭恒例のプログラム「日本のコメディ・世界のコメディ」部門のセレクト作品「ニッポン無責任時代」が上映されました。上映前のトークショーでは清水圭が司会・進行を務め、編集者であり、作家、演出家とマルチな顔を持つ高平哲郎さん、そして映画監督の山本晋也さんが登壇し、本作品のみどころを存分に語ってくれました。
「ニッポン無責任時代」は主演の植木等さんをはじめ、クレージーキャッツのメンバーが出演し、娯楽映画の名手である古澤憲吾監督がメガホンを取った痛快サラリーマンコメディ。植木さん演じる主人公があの手この手で成り上がっていく様がユーモアたっぷりに描かれ、シリーズ化される程の人気を博した作品です。
まだ本作品を観たことがないと話す清水に、「もう何度も観た」と繰り返すのは本部門のプロデューサーでもある高平さん。「植木さんのヒット曲が(劇中に)散りばめられているんだけど、青島幸雄さん作の詞がすごいの。“無責任さ”を植木さんに託したんだよね。ミュージカルでもないのにいきなり歌いだすし、とにかく映画自体が無責任なんだよ(笑)」と愛情たっぷりに話します。
次いで清水が、古澤監督について山本監督に話を振ると「まさに娯楽。観客が喜ぶことしか考えられない職人のような人だった」と振り返り、「舞台上で踊り子が踊っていたと思ったら、自然に宴会なんかの劇中シーンに切り替わって、すごく斬新な演出だと驚いたもん」と監督ならでは目線で映画の魅力を語ります。
またヒロインの重山規子、中島そのみ、団令子ら“お姐ちゃんトリオ”に話が及ぶと、それぞれが自分の時代の三人娘はこの人だったあの人だったと大盛り上がりの3人。その後も植木さんの話に、セリフやセットの貴重な裏話など楽しいトークが続く中、トークショーも終盤へ。
実は本作品は、映画の配給元である東宝がフィルム以外では上映してほしくないとこだわり深い作品だそうで、高平さんは「この部門で映画選定を担当してから3年目になるけど、今年ようやくこの場で、フィルムで上映することができました」と念願叶い感慨深げ。山本監督も「DVDでもなくVHSでもなくフィルムで観られるなんて、今日はかなりお宝チャンスです!」と観客に向けてアピール。まだまだ話し足りなそうな2人でしたが、最後は「楽しんで!」という山本監督の声とともに、大きな拍手の中、3人は会場を後にしました。ただ清水だけは、またとない“お宝上映”の機会に「ほな私も観ていきますわー」と再び会場へ戻り、観客と一緒に映画を満喫していきました。