3月25日(水)那覇市のよしもと沖縄花月にて「クリエイターズ・ファクトリー 最終公開審査会」が行われました。
「クリエイターズ・ファクトリー」は、2013年より始まったコンペティション部門で、最優秀賞に輝いた受賞者の次回作は、沖縄国際映画祭がバックアップするという、次世代を担う人材の発掘・育成を行う企画です。
クリエイターズ・ファクトリー優秀作品上映会に続いて行われた公開審査会では、映画監督の中江裕司さん、真喜屋力さん、自主映画作家の北村潤伍さんら審査員をはじめ、2次審査を通過した優秀作品の各監督、『君を連れて行く、いいよね。』の繁田健治さん、『泡泡日本夢(仮)』のシュアン施鈺萱さん、『傷人形』の本吉聡子さんらが舞台に登場し、公開審査が行われました。
審査員で脚本家の中江素子さんは、「『傷人形』を推したいと思います。作り手としての冷静な目線を感じ、すごい作り手だと思い、次の作品を観たいと思いました」とコメント。桜坂劇場の番組編成を務める下地久美子さんも、「『傷人形』が良かったなと思います」とコメントしましたが、女子高生の制服が作品のポイントになっている『君を連れて行く、いいよね。』にあわせて制服姿で登場していたので、「制服を着させていただいたのにこの作品(『君を連れて行く、いいよね。』)を推さないなんて申し訳ないです」というと、会場では笑いが起きました。
ほかにも客席からも、アイドルのシュアンさん自身のド キュメンタリーを描いた『泡泡日本夢(仮)』に対して「シュアンさんを応援したい気持ちになった」というコメントがあり、「『君を連れて行く、いいよね。』は、好きなことにとことんこだわり、映像化するのはすごい!」などと、観客によるいろいろな感想も飛び交ったほか、どの人の次回作を観たいか観客に拍手式の投票を求める場面もありました。
審査会も終盤、審査員長の中江裕司さんより最優秀賞の発表が行われ、見事クリエイターズ・ファクトリー最優秀賞を受賞したのは、『傷人形』の監督を務めた本吉聡子さん。『傷人形』は、心のどこかが抜けてしまった少女(人形?) と、完成しない自主映画を撮り続ける男の、どうにもならないジレンマが、シュヴァンクマイエルの様なシュールな人形アニメともに描かれる作品です。
シーサー形のトロフィーの授与が行なわれ、最優秀賞を受賞した本吉さんは、「まさか選ばれるとは思っていなかったのですごく嬉しいです、ありがとうございます。これからも頑張っていきたいと思います」とあいさつしました。
本吉さんは、審査委員長の中江さんの次回作はどんなものを撮りたいかという問いに、「元々アニメーションの制作をしていたので、がっつりアニメーションを撮りたい。でも、実写の映像とアニメーションを組み合わせるのが面白いと感じているので、そういった技術を試したい。お話でいうと、青春っぽいものを撮りたい。女子高生同士の楽しいところも、陰湿な感じとかも描けたら面白いかなと思っています」と語ってくれていました。
最後に中江さんが、「60本くらいの映画の中から非常に楽しく、いろいろな映画を見させていただきました。多分、この最優秀賞を含めて今日上映した作品の、何が良かったのかなと考えた時に、作り手と作品の差がないことが大事なのではないかと思いました」と今回の審査を振り返りました。続けて「映画がどんどん規格品のように、大量生産みたいにどんどん作られていると僕は感じていて、それでは多分、日本映画だけでなく世界の映画界は良くなっていかないし、面白くなっていかないって思っているんです。そこにあるのは一人一人の顔が違うように、作品も一人一人の感性が違うわけですから、その自分の感性が唯一の映画の突破口と信じて、これからもお三方には撮りつづけていただきたいと思います」と監督らにエールを送り、公開審査会は幕を閉じました。